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環境問題を解決する日本の技術力第1回

70歳を過ぎたベンチャーの社長

吉田 博一さん  エリーパワー株式会社は私が69歳の時、2006年に起業したベンチャー企業です。
手がけているのは大型リチウムイオン電池の開発と製造。ベンチャー企業というと、IT産業のように大きな資本を必要としないサービス産業がほとんどですから、
当社のような莫大な投資が必要な装置産業のベンチャー企業は珍しい。おまけに社長の私が70歳を超えていますから異例ずくめといわれています。私自身も、自分がベンチャー企業を設立して社長になるなんて想像もしていませんでした。

すべてのきっかけは、三井住友銀リース(現・三井住友ファイナンス&リース)の社長だった頃、「これからは環境ビジネスだ!」と直感したこと。リース会社はお客様に貸し出していた商品を最終的に処分しなければなりません。当時、三井住友銀リースには1兆6000億円の資産がありましたが、巨額資産は、廃棄するにも巨額のお金を必要とします。業者任せにしていた廃棄物処理を自分たちでできないか、いろいろ調べるうちに環境を制するものこそリース事業を制するようになるのではないかと考えました。

結果的には自分たちで廃棄物処理を行うことは難しいと知るのですが、ちょうど同じ頃、中国で、日本のリース会社のシールが附いたパソコンが大量に廃棄されているのが発見されるというニュースもあり、調べれば調べるほど、リース会社だけでなく、日本が本気で取り組まなければならない課題が環境対策だと思いました。

環境問題を調べるうちに出会ったのが、慶應義塾大学環境情報学部教授の清水浩さんです。環境改善は廃棄物処理だけでなく、CO2排出量を抑える工夫をしなければなりません。清水さんは25年前からガソリン車よりも圧倒的にCO2排出量が少ない、電気自動車実用化に取り組んでいました。電気自動車というと、遅いというイメージを持たれる方が多いでしょうが、清水教授が作った電気自動車はそうではない。ガソリンで走る自動車よりもスピードが出て、走りもスムーズです。直感的に電気自動車の時代が必ず来ると思いました。

電気自動車実用化に向け25年間研究を行ってきた熱意は素晴らしいが、25年間なかなか実用化できなかったということでもある。それだけ研究を続けると費用もなくなってきます。そこで私が清水教授のお手伝いをすることになったのです。

技術と社会を結びつける、テクノロジーマネジメントという新しい産学連携スタイルを作り、企業から多大なご支援を頂くことができました。それがエリーカプロジェクトです。日本の大学と企業は、一度は連携できても、学術研究と企業が望む成果には相容れないところがあり、継続的に関係を結ぶことが難しいのですが、それを成功させることができました。また、元F1ドライバーの片山右京さんにボランティアでドライバーをしていただけることになり、エリーカは時速370㎞で走る実験にも成功しました。電気自動車の性能が証明できたのです。

ところが、電気自動車実用化には大きな課題があることもわかってきました。電気自動車を産業にするためには、搭載する充電池の問題を改善する必要があったのです。電気自動車のバッテリーとして搭載する大型のリチウムイオン電池は、電池メーカーが受注生産で製造していました。パソコンや携帯電話に搭載されているリチウムイオン電池は大量生産されているため低コストで供給されていますが、受注生産の大型リチウムイオン電池は値段が高く、エリーカに搭載したリチウムイオン電池は2000万円もしました。量産してコストを下げて欲しいと頼んでも、電池メーカーは受注生産こそ収益性が高いと、なかなか首を縦に振ってくれません。

それじゃ、自分たちで大型のリチウムイオン電池を作ってしまおうと起業したのがエリーパワーです。今ではこの仕事を世に出していくことこそ、私自身の夢になってしまっています。
 
 

よしだ ひろいち

1937年東京生まれ。61年慶應義塾大学法学部法律学科を卒業と同時に住友銀行入行。
86年に同行取締役、副頭取。97年に住銀リース株式会社取締役社長に就任。
2001年には三井住友銀リース株式会社代表取締役会長兼社長。02年同社特別顧問。
03年より慶應義塾大学政策・メディア研究科教授(08年退官)。
06年、エリーパワー株式会社を創業。代表取締役社長に就任。