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教育コラム【中学校新学習指導要領、全面実施で現場に何が・・・】 日本教育新聞社 提供

『日本教育新聞社』の編集者によるオリジナルの書き下ろしコラムです。

 

【中学校新学習指導要領、全面実施で現場に何が・・・】

 中学校ではこの4月から、新しい学習指導要領が全面実施されます。その際、大きな課題の一つとなっているのが、授業時間数をどう確保するかということです。
 新学習指導要領はそれまでの、いわゆる「ゆとり教育」から転換し、学習の内容を増やし、学習する時間も増やしました。例えば、中学校の標準授業時数は旧課程において各学年ともに980時間であったものが、新課程では各学年ともに1015時間に増加します。週当たりのコマ数にすると、28コマから29コマへと、1コマ分増加することになります。中学校を取材していますと、「たかが1コマ、されど1コマ」と評する先生方が何人かいました。月曜から金曜日までの間で、消化しようと考えれば、6時間目まで授業をしなければならない曜日がもう1日増えてしまうわけです。

 

 日本教育新聞社が今年の1月に掲載した中学校の新学習指導要領の準備状況調査では、7割を超える中学校校長が「授業時間数増への対応」を指摘しています。
 単純に1週間の授業時間数を増やしてしまえば、事は簡単ですが、生徒たちへの学習負担の増加や、ただでさえ多忙な職場でもある中学校の教師と生徒との触れ合いの時間が減ること、放課後の委員会活動、部活動への影響を心配しているためです。

 

 中学校の校長たちで組織する全日本中学校校長会がまとめた平成23年度調査報告でも、新学習指導要領の全面実施に向けた取り組みについて、その意向を聞いています。
 各学級の放課後における班長会や班会議、あるいは生徒会活動や委員会活動の時間の確保をどうするかと尋ねたところ、「1日の時程を工夫する」という回答が多く見られました。また、学校行事の準備(練習)の時間確保でも「1日の時程を工夫する」という回答が多いのですが、その一方で「学校行事を縮減する」と回答した学校が1割ほどありました。中学時代の学校行事は人間形成にとても意義のあることという共通理解はあっても、時間が捻出できないと言う事です。
 また、先の日本教育新聞社の調査では、授業時数を確保するために、数は多くはありませんでしたが、土曜日を授業日に活用したり、夏休みなどを短縮して授業日を生み出そうという自治体もありました。生徒や教師もこれまでより、負担が増えることは間違いがありません。
 教科の方に目をやれば、3年間の標準授業時数は総合的な学習の時間(210~335時間→190時間)が減り、国語(350時間→385時間)、社会(295時間→350時間)、外国語(315時間→420時間)、保健体育(270時間→420時間)では時数が増えています。

 

 今回の改訂では、基礎的な知識・技能の定着や知識・技能を活用し、自ら考え、判断し、表現する力の育成、学習に取り組む意欲の醸成などを「学力の重要な3つの要素」として同時に育んでいきます。
 繰り返し学習などによる「基礎的・基本的な知識・技能の習得の重視」や「思考力・判断力・表現力等の育成の重視」も目標になっています。そして、全ての教科・領域で、言語活動や道徳教育の充実なども求められています。

 

 しかし、すでに1年早く全面実施した小学校では、教科によって授業進度に遅れが出ているという民間調査や、日本教育新聞社の調査でも児童によって基礎的な知識・技能の定着に課題が出ているとの声が寄せられています。家庭での学習習慣の確立なども、こうした課題解決のためにはより必要になってきます。
 さらに、小学校外国語活動を体験した新入生たちが英語嫌いにならないための英語授業の工夫、保健体育での武道・ダンス必修化による指導方法の充実と安全確保なども、全面実施を前に懸念されるところです。
 1年後にどういった成果が見られ、反対に弊害、課題が生まれているのか。きめ細かな検証も求められるところです。

 

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