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教育コラム【課題残した「デジタル読解力調査」】 日本教育新聞社 提供

『日本教育新聞社』の編集者によるオリジナルの書き下ろしコラムです。

 

【課題残した「デジタル読解力調査」】

 日本の学力問題において指標の一つになっているPISA調査(国際学習到達度調査)のデジタル版、コンピュータを使って読解力を測る「デジタル読解力調査」の結果が話題になっている。日本は4位になったものの、1位韓国の平均点を49点下回った。筆記型の「プリント読解力」での韓国との平均点差は19点だった。この得点差をどう見ればいいだろうか。

 

 今回のデジタル読解力調査は、PISA調査が従来、筆記型調査として実施してきたものを、将来的にコンピュータ使用型調査に移行しようとする予定があるため、それを見越し、PISA2009を実施した際、国際オプションとして「デジタル読解力調査」(コンピュータ使用型調査)とコンピュータ利用などに関する生徒への調査(ICT質問紙調査)として実施したものだ。
 PISA2009には65カ国・地域の15歳児(高校1年生)約47万人が参加したが、デジタル読解力調査には、このうち19カ国・地域、約3万6千人が参加した。ICT質問紙調査は17カ国・地域、約3万4千人の参加である。

 

 筆記型とコンピュータ使用型の調査では、別の問題を使用し、コンピュータ使用型調査の場合、「問題を解くために、ホームページへのアクセス、ボタンのクリック、コピー&ペースト、eメールの送受信、ウェブの掲示板への書き込み等、いわゆるICTリテラシーに関する知識・技能が必要」と、筆記型調査との相違点を挙げている。ただし、調査ではインターネットに実際に接続するわけでなく、USBメモリーに収められているハイパーテキストに限定している。
 公開されている問題例を見ると、少女のブログ画面を基に出題されているものがある。その問いの一つ、「ブログ内の『このサイトについて』のページに移動して下さい」「学校を卒業したらどんな種類の仕事につきたいと思っていますか」に対して、「写真関係」「ウェブデザイン」「銀行業務」「社会福祉関係」から選ぶ。ちなみに正答率は韓国93.7%、日本73.4%である。

 

 コンピュータが不可欠な社会となっていく中で、職場、個人の生活、社会生活などでも「インターネットを効果的に利用する技能・知識を持っていることが必要」になっていることから、そのスキルを含めた「デジタル読解力」が求められているということだろう。
 日本の場合、今回は成績が上位にあったものの、いくつか気になる点もある。
 報告書では、日本の現状について▽マルチメディア作品を作ることが「自分で上手にできる」「誰かに手伝ってもらえばできる」と回答した生徒の割合が、日本はデジタル読解力調査およびICT質問紙に参加した17カ国中で最も少ない▽国語、数学、理科のいずれの授業においても、コンピュータを使用しないと回答した(無答・無効を含む)生徒の割合が、デジタル読解力調査に参加した17カ国中最も多かった―点などに言及している。
 先般公表された文部科学省の平成22年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査(平成23年3月現在)速報値では、コンピュータ1台当たりの児童生徒当たりの平均値は6.6人/台。これは都道府県によってばらつきもあり、低いところでは8.3人/台まで落ちる。また、「授業中にICTを活用して指導する能力」を有する教員の割合は62.3%と、とても十分とは言えない現状だ。
 韓国では小・中・高の国、英、算・数を対象に教科書の内容をCD―ROMに収めた「e―教科書」の配布なども視野に入っていると指摘されている。それだけコンピュータの活用が日常化するということだろう。
 デジタル読解力調査からは、学校でコンピュータを利用している生徒の方が、得点が有意に高いなども分かっており、日本でも機器整備も含め生徒たちがコンピュータに接触する量と質、授業での指導可能層を拡大していくなどの改善が急務と思われる。

 

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