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教育コラム【企業のCSR活動で学校教育活動を充実させる】 日本教育新聞社 提供

『日本教育新聞社』の編集者によるオリジナルの書き下ろしコラムです。

 

【企業のCSR活動で学校教育活動を充実させる】

 総合的な学習の時間の創設以来、授業への外部人材の協力が珍しいものではなくなった。新年度からは、新しい学習指導要領が全面実施となる小学校での外国語活動でも、外国語に堪能な地域の人々の出番も増えることになるかもしれない。
 教育における官民連携での象徴的な例を挙げれば、学習塾の講師の公立学校での活用であろうか。授業で指導するばかりでなく、教師の研修講師としても活躍する時代へと移り変わりつつある。

 

 だが、いまだに学校の壁が厚いというつぶやきを多く聞くのは、企業の関係者からである。一昔前のメセナや社会貢献など初期の地域貢献活動時代を経て、現在はCSR(Corporate Social Responsibility)、いわゆる「企業の社会的責任」を果たす活動が盛んになっているため、その貢献先の一つとして学校が切望されているのだ。

 

 こうした企業活動と学校をつないで特色ある取り組みを展開している自治体の一つに東京都墨田区がある。教育委員会が主導して「学校支援ネットワーク事業」に取り組んでいる。
 同区では国が進めている「学校支援地域本部事業」を、「学校支援ネットワーク事業」という名称で実施し、その対象を区内の全小・中学校に設定している点にも特色がある。
 事業内容は▽外部講師の派遣▽職場体験などキャリア教育支援▽生徒のボランティア活動支援▽学習活動の支援―などである。
 平成21年度から主に区立中学校を対象にしてスタートし、22年度からは小学校にも拡大して実施してきた。
 教育委員会事務局内に「学校支援ネットワーク実行委員会」を組織し、「学校支援ネットワーク本部」を設置。学校と地域の人材、住民、企業、学生などをつなぐために「地域コーディネーター」を配置している。
 企業が社会貢献活動として、個別に学校と交渉するのではなく、「学校支援ネットワーク本部」が一手に引き受けて、受け入れる体制を整えるため、円滑に進んでいる。
 その情報については、「学校支援ネットワークニュース」によって学校にもたらされる。22年度には約70の「学校支援ネットワークニュース」が発行されている。
 教科、進路、環境、文化、福祉、安全、国際などに分類され、対象学年、内容・外部講師、提供主体などが明記されている。
 例えば、日本IBMによる「EWeeK ROBOLAB教室」。理科や総合、キャリア教育の時間に活用できる。自分で「レゴ自動車ロボット」を組み立て、命令を与えて動かすことのできるROBOLABプログラムの体験ができる。対象は小学5年生から中学3年生で、エンジニアという仕事への理解を深め、コンピュータ能力活用の育成を図れる。社員が指導し、最大20台までのパソコンも同社が用意してくれる。
 日立グループでは、「ユニバーサルデザイン体感学習」を提供する。福祉、総合、図工・美術、地域理解などで学べる。視覚障害者にとっても使いやすい製品を考える、をテーマに、講話、生徒が考えたアイデアの発表などを行う。
 KDDIの社員は「ケータイの安心・安全な使い方」(セーフティ教室)を指導するといった具合だ。
 もちろん公的機関や施設、地域人材などによる学習プログラムも多く提供されている。
 出張授業の実施校は延べで60校を超え、参加した児童・生徒は6400人を超えた。

 

 学校側にとっても、多忙な日常を抱える中、自分たちで企業などの開拓をする手間が省け、充実したい教育内容に合わせて活動をチョイスすることができる。企業にとっても門戸を開いてくれる学校を探す労力が軽減され、ニーズの高い学校での活動を展開できるというメリットがある。

 教育のシーンでは、今後も形を変えながら、官民の連携が一層進む可能性は高いが、両者を結びつけ、潤滑油的働きをする組織作り、仕組みの工夫などはもっとさまざまな自治体などで取り組まれていいのではないだろうか。 

 

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